中屋敷法二「いまさらキスシーン」
あらすじ
華も恥じらう乙女だが、部活に勉強にマジ多忙!!
ちっとも身動き取れなくて、若さを楽しむ余裕がねぇ!!
あらすじはCorich舞台芸術の「いまさらキスシーン」のページからお借りいたしました。まさに、この感じ。
インディペンデントシアターという一人芝居フェスの参加作品だったようです。
とにかく疾走感がすごい!
あと文字のテンポが気持ち良いです。舞台は観たことがないのですが、読んでいると自分が読んでいる感じがしないというか、この主人公の女子校生が自力で暴れてる感じで、とても楽しく読みました。途中ちょっと心身ともに痛い痛い痛い〜ってなるシーンもあり・・・
女の子と一緒に(脳内で)飛んだり跳ねたりしながら、スラスラと読めてしまう戯曲でした。
一人芝居用の戯曲なので「」などは一切なし。
現在柿喰う客のHPの「となりの柿喰う客」というページに無料公開されています。他の作品の戯曲や舞台映像も沢山公開されていますのでぜひ見てみてください。
現在「柿喰う客フェスティバル」が開催されていて、その中の一つとしてこの「いまさらキスシーン」が上演されています。今回は観に行けませんがぜひともまた再演していただきたい作品です。
W・シェイクスピア「夏の夜の夢」
あらすじ
アテネの公爵シーシアスはアマゾンの女王ヒポリタとの婚儀をあと4日に控え、幸せな焦燥感を味わっていた。そこへ貴族イジーアスから訴訟が持ち込まれる。娘のハーミアが親の意思を無視して別な男と結婚したいと言って聞かないというのだ。アテネの法律によれば、親の意向を無視した娘に与えられる選択は死か、生涯を神々に捧げるか、どちらかしかない。公爵はハーミアに考える猶予を与える。絶望のどん底にいるハーミアに恋人ライサンダーは駆け落ちを持ちかけ、あくる夜、実行することにする。
感想
実は初めてシェイクスピアを読みました。
結論としては面白かった。人から聞いた話によるとシェイクスピアの中では一番ソフトなものみたい。笑えるし。ハッピーエンド。
ただ沢山登場人物がいるので覚えるまでが大変でした。
2人のカップルのすれ違いや、町の男たちのダメで愉快な劇を「ありゃだめだ」といいながら楽しんでる人たちのシーンが好きです。
ずっと「真夏の夜の夢」だと思っていたんですが「夏の夜の夢」だったのか〜と本を買うときに気づいたのですが、今調べたら「真夏の夜の夢」と訳す場合もあるそうな。ちなみに劇中の季節は五月くらいらしいです。ヨーロッパでは五月初旬、夏至の日のあたりは妖精の力が強まり、祝祭が催されるという言い伝えがあるそうです。
いろんな出版社から出ています。
違う和訳で読み比べるのも楽しいかもしれませんね。
太田省吾「千年の夏」「午後の光」「棲家」
「千年の夏」
夏のビーチでの、男の話
男と女の話?愛の話?
麻の上衣(男)と双眼鏡(男)、ちょっと間抜けな会話が面白い。
ページを開いたときに感じた「難しいのでは…?」という期待を裏切り、くすりとする場面もありました。
「午後の光」
この3つの作品の中では一番好き。老夫婦のお話。
老人を演じる俳優のエッセイの引用からはじまる、俳優から、役へ、どのように移行して行ったのか実際の舞台を見てみたくなった。
「棲家」
「午後の光」と似たテーマだと思う。こちらも老夫婦の話。
布団を二組敷く、その間の距離で揉めたりする、「午後の光」でも思ったがなんだかこの戯曲に出てくる老父婦は可愛い。
巻末の公演記録を見ると、「午後の光」と「棲家」の老人は同じ俳優さんが演じられたようです。なるほど、それで感じる雰囲気が似てる、というのもあるのかも(当て書きかどうかはわからないけど・・・)
太田省吾といえば高校生のときにNHKで深夜に放送されてた演劇の番組で「水の駅」*1を見た記憶があります(うろおぼえですが)、なので「難しいんでしょ」と思っていました。意外とわかりやすくて楽しんで読めました。
▼Amazonにもあります。
*1:全編セリフなしの舞台「駅シリーズ」のひとつ
野田秀樹「パンドラの鐘」
あらすじ
物語の舞台は、大平洋戦争開戦前夜の長崎。歴史の謎に惹かれ、考古学者たちが掘り出したのは、土深く埋もれた巨大な古代の鐘。
その鐘の姿から、歴史から遠く忘れ去られた古代王国と、 鐘と一緒に葬られた古代の秘密が浮かび上がる。決して覗いてはならなかった「パンドラの鐘」に記された王国滅亡の謎とは?そして、古代の光の中に浮かび上がった<未来>の行方とは・・・?
感想
面白い。読みやすい。テンポがすごくいい。
登場人物のことが好きになれるけど、寄り添えすぎないフィクションに浸れる感じ。舞台みたくなった。ロマンスありき。女子の方が好きなんじゃないだろうかと感じました。
野田地図は「エッグ」の再演と「逆鱗」、2回の観劇をしていて『あれ、私にはあわないぞ・・・』と思ったばかり。でも戯曲は面白い。うーん
舞台が合わないのだろうか、作品が合わなかったのか・・・
好みではあるんですが、戦争を絡めてくる作品が苦手です。
もちろんいままでみた中でそれでも優れた作品はあったけど、萎えちゃう。戦争ってすごく影響力が強い。戦争だから悲惨、つらくて苦しくて大変で死んじゃって、戦争ってだけでドラマがありすぎる。野田地図の作品は「エッグ」も「逆鱗」もこの「パンドラの鐘」も背景には【戦争】がある。描きたいことなんだろうけど・・・それがなくてファンタジー、フィクション作品でいいんじゃないの?っていう感じです。そんなこと言ったら怒っちゃうひとも出てくるだろうけど・・・でも野田地図は【戦争】をチラつかせないとこまでが面白いと思うので。
「パンドラの鐘」も原爆がチラついたとこであーやっぱ戦争ものなんだ、って少し残念な気持ちになってしまって。
「パンドラの鐘」の初演は1999年、この間見た「逆鱗」は2016年の作品、15年以上戦争もの書いてるのか、はたまた原点回帰?他の作品も読んでみようと思います。
全部最高面白かった!とはならないけど、前半やテンポがすごく好きだったので結論は面白かったということです。
野田秀樹「20世紀最後の戯曲集」に収録されています。